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独創性と新感覚あふれる作品と今後の活躍が期待できる写真家の発掘とサポートを目的とされた公募展「ARTBOX写真賞」を受賞された伊藤 勝敏さんの展覧会が開催されております。色とりどりの深い海の世界を撮り続けている伊藤さんの作品にまつわる興味深いエピソードをお聞きしました。

プロフィール
1937年 大阪生まれ。1988年アニマ賞(平凡社)/1999年朝日海とのふれあい賞(朝日新聞社)/2001年伊東市技能功労賞(伊東市)2006年ARTBOX写真賞
著書: 「龍宮」日本カメラ社/「海の宇宙」朝日新聞社/「魚たちの世界へ」河出書房新社/「伊豆の海」データハウス社/「海と親しもう−遊ぶ・観察する・学ぶ」岩波ジュニア新書
日本写真家協会会員
2007年8月5日より個展

写真絵本『海いろいろ』出版にあたって
今回出版されました写真絵本絵本『海いろいろ』では海の生き物が、なぜこのような色をしているのかという彩色の不思議をテーマにまとめました。海中写真を撮り続けてかなりの年月が経ちますが、私達と海の中の生き物とでは、まったく別の色彩を感じているように思える時が数多くあります。
海はまさに「海中彩色劇場」です。環境が悪くなり、そこに生きる生物が少しずつ姿を消すようなことになると、この劇場の存亡に関わります。
地球の誕生以来、まっ先に命を授かった彼らの息吹きを感じて、私たちと一緒に限られた地球の自然環境を共有する大切さを考えるきっかけになればうれしいことです。魚のたくましい生き方
イソギンチャクやクマノミの共生は仲良く暮らすのが美徳のように語られていますが、自分を犠牲にして相手を助けているのではありません。どんなに釣り合いがとれて表面上仲良くみえても、実際はそれぞれが利己的に生きているだけなのです。
人の社会も、夫婦生活も同じようなことだという本当の現実の世界を、たくましい魚の生き方を通して教わっているように思います。
また、人間たちが捨てた廃棄物をすみ家としてしたたかに生きる魚たちがいます。そんな姿を見ると複雑な気持ちになりますが、これも一つの生き方として捉えて海の環境を守るメッセージとして真摯に伝えていきたいと思い、ルポタージュにも取り組んでいます。撮影時間の制約との戦い
海の中では、レンズやフィルムの交換が出来ません。また呼吸する空気ボンベの容量にも限度があり、普通1時間くらいしか潜れないのです。すぐにまたボンベを交換して潜りたいときもありますが、潜水病の危険がともなうため、ある程度の休憩が必要になります。すると1日に3回ぐらいしか潜ることができないのです。
撮影時間に制約をうけることには苦しみます。
また最近、海水の透明度が悪くなり、被写体を探すにも苦労します。しかし、いつも同じところに潜り、定点観察などをしていると顔なじみになった根づきの魚が現れて、時にはポーズをとってくれたりするので楽しめることもあるんですよ。

 

コブダイ
頭部のコブが大きいオスの雄姿を接近して写すため出現する沖の根にくる日もくる日も潜水してチャレンジしたことがあります。その為、浜辺でテントをはり、苦労して野宿したのが想い出となっています。

シュモクザメ
真冬の与那国の海、潮流の速い水深30メートルの岩磯の上でシュモクザメを待つのだが、なかなか現れず写真を写すのに5年くらいかかっているやっかいな被写体です。

ヤマトナンカイヒトデ
ホームグランドの東伊豆の潜水ポイントで、黄色いからだと不気味なトゲだらけの幻想的なヒトデを見つけたときは、飛び上がるほどびっくりしました。宇宙からきたUFOが海中に忍び込んだのではないかと思ったほどです。後で調べてみると深海性のまれにみる珍しい種だとわかりました。

作品一覧

現代日本の写真/年鑑
過去から未来へとつなぐ、現代(いま)を見据える写真家の視点。ファインアート・コマーシャル・エディトリアル・ドキュメントetc... 多彩で多様な「いま」の写真表現を各アーティスト見開き 2 ページに作品、プロフィールを掲載。写真芸術の現在を展望できるクオリティ豊かな作品集となっております。

鮮やかに広がる、海中世界を撮り続けてきた伊藤勝敏さん。
生物の生態を定点観察するなど、写真家であると同時に研究者である伊藤さんの海に対する深い情熱を感じました。
これからも海の魅力と環境保全の大切さを多くの人々に伝えていってほしいと思います。

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